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選手インタビュー記事第7弾親子対談「目指すは親子でのRIZIN出場、元氣&北野ヒナタ(楠誠会館)」

記事・写真:安村発

西日本地区選手にスポットを当てるファイターズスピリッツマガジンによる選手インタビュー記事第7弾は安村発氏によるインタビューにてお送りします。
関西を代表する選手の一人である元氣(もとき)はホームのMA日本キックのリングだけでなく、RIZINのリングでも殴り合い上等のアグレッシブファイトで会場を沸かせ、RIZINの関西方面の大会では欠かせないファイターになりつつある。そして、元氣の愛娘の北野ヒナタは今年春に晴れて高校進学する普通の女の子かと思いきや、ジュニア時代から頭角を現し、アマチュア戦績は135戦105勝29敗1分とタイ人ばりの試合数を誇る。5月予定のプロデビュー戦を前に、「目指すは親子でのRIZIN出場」を目標に掲げる北野親子の対談で、ヒナタの強さに迫る。

――格闘技は何歳から始めたんですか?
ヒナタ 5歳ぐらいに自然な流れで楠誠会館で始めました。スクワットするだけですぐ泣くような子だったみたいです(苦笑)。
元氣 負けず嫌いな性格で、だからこそ練習でできないことがあったら悔しくて泣いてしまう自分がいたみたいですね。
――アマチュア戦績がかなりあるんですよね?
ヒナタ 135戦して105勝してます。
元氣 アマチュアのAクラス上がりたての時ぐらいから、ヒナタが強くなりすぎたせいで対戦相手がいなくなってしまい、体重の重い男女と契約体重に満たないまま対戦した試合でしか負けていません。
――そういう対戦相手がいなくなるケースは女子選手では珍しいですね。最初に格闘技を始めた頃のことは覚えてますか?
ヒナタ 全然覚えてないのですが、試合ではとにかく攻撃を出し続けるスタイルだったみたいです。ちなみに小学1年の時に、初めて出た大会で優勝しました。

――元氣代表は格闘家の大変さを知っていることで娘に格闘技をやらせたくないとは思わなかったですか。
元氣 痛みのある競技なので、うちの息子や娘らに格闘技をやらせる気はなかったんです。頑張る以上のことをしないと絶対に強くなれないし得るものも得れないし、人を納得させることもできないから、その位置に行くまで相当な努力と根性など色々なことが必要になってくるので、格闘技ではなく、他のスポーツをした方がいいと思ったんですけど、自分たちからやりたいと言うんです。一度だけ、「格闘技なんかもう辞める!」と言われて「そういうこと言うならこっちもええわ! 全部道具を捨てろ」と言って親子喧嘩したこともあったんですけど、自分で投げ捨てた道具を拾いに行って「やっぱりやったる!」と言って、またやり始めたことがありましたね。そこから気持ちが変わったのか、誰にも負けへんぐらい努力するようになりました。子供たちの中でヒナタが一番、僕にボコボコにされたのによく耐えてきたと思います(苦笑)。
ヒナタ そのおかげで打たれ強くなった今の自分がいるのかもしれないです(笑)。
――その時は何が嫌でやめたいと言い始めたんですか?
ヒナタ 練習がきつすぎる上に、お父さんとのスパーでボコボコにされるので(苦笑)。
元氣 いやいや(笑)。僕が一番大事にしてるのは基本なので、基本ができてないのに、次のステップをしようとしていたんです。今だったらYouTubeで選手の映像を見て真似する子が多いですよね。この時はそういうのはなかったんですけど、道場や試合会場で他の選手の良いところばかりを見てそれを真似しようとしていたので、そうじゃないだろうって。僕の言うことを全然聞かなかったことで、試合でも勝てない暗黒の時期があったんです。
ヒナタ 今の結果につながっているので、あの時にお父さんから口酸っぱく言われてホント良かったなと思います。
――小さい時はスパルタ指導はありました?
元氣 うちの子だとヒナタだけです(笑)。主に、セコンドの指示を聞け、道具を大事にしろというだけでしたね。
ヒナタ もうボコボコにされた記憶しかないです(笑)。
元氣 あと、今いる弟子全員にもめっちゃきつく指導してきたことで、みんな結果を残してます。選手になりたい子に関しても、僕が命を預かっている身も同じように教えています。でも今は時代が時代なんで、その下の世代の子らには全く厳しく指導できないですね。
――スパルタ指導をしていて、奥さんからやりすぎだと止められることはなかったですか。
元氣 ヒナタが本気で格闘技に向き合うんやったら、何も言わず、サポートだけしてと言って了解を得ていたんです。みんな一緒になって、みんなで支え合って行こうぜと。だから、僕がきつく指導していたら嫁が優しく接していて、2人一緒にヒナタに怒ることはやめようと。

――飴と鞭を上手に使い分けていたんですね。
ヒナタ お父さんは基本、試合で負けた時に怒ることはあんまりなかったです。
元氣 ヒナタが負けて反省しなかったり、ダメなことを全然わかってなかったら怒るんです。負けたからといって自分のエゴで怒ることはなく、悔しいのは本人やし、僕も悔しいですけど、自分の頑張りが足りなかった、セコンドの指示を聞かなかったの自分のせいやろと。そういうことを言ってあげるタイプなんで、弟子たちにもそうしてきました。
――練習は学校が終わったら、すぐ道場に来る流れだったんですか?
ヒナタ そうです。学校の友達はみんな放課後に遊んだりしていて、辞めたい時期はうらやましいなとは思ってました。
元氣 基本、うちはちゃんとメリハリを付けて練習させていて、家族みんな格闘技を見るのは好きなんで、一緒にUFCを見ることはありますけど、家に帰ったら一切格闘技の話はしないですし、家で格闘技の練習もしないんです。だから、家に帰るとリラックスできる場なのかなと。
ヒナタ 試合の前はダメやけど、遊びに行くときは遊びに行っていいし、ちゃんと自分で練習時間を調整できているようだったら自由に遊べています。
――では、今もみんなが遊んでる中で自分も遊びたいという欲求はないですか?
ヒナタ 今はそんなにないですね。遊べるときは遊ぶので。今はみんな受験の時期なんでどっちにしろ遊べないんです。一応、私は高校受験は受かっていて、学校に行ってもみんなに喋りかけると悪いから、昼に帰ってきて練習してます(笑)。
――格闘技以外に他のこともやりたいことは今までになかったですか?
ヒナタ 小学生の時は、遊びたくて友達の家にランドセルをわざと忘れて遊ぶ小細工をしたことがありました(苦笑)。
元氣 それを一回僕に見つかって、怒られたんだよな。お前どこに置いてきてんねん! って。それからそういうことはしなくなりました。
――小さな反抗だったんですね。
ヒナタ そうですね。仮病で練習を休むことは絶対に無理だったので(笑)。
――ご自身としては、真面目にやるようになった転機はありました?
ヒナタ やっぱり試合に勝つようになってからですね。負けていたときはなんで練習してきたのに勝てないんやってイライラしてました。
元氣 勝っていた試合でも負けにされた試合もありましたが、負けたことには意味があると思うんですよ。勝ち癖を付けるまではきつかったよな?
ヒナタ 10連敗ぐらいしていた時期があり、私は体は小さかったし、どうしたら勝てるんやろとお父さんと模索し続けて、今のスタイルになりました。当時は中途半端に上手くやって手数だけ出そうとしていたのですが、今はそうじゃなく、効かせて倒すことをイメージすることでだいぶ変わりましたね。勝てるようになったことで練習も楽しくなりましたし、苦ではなくなりました。
元氣 ヒナタが勝つようになってからは僕もある程度怒らないようになったんです。そしたら、もっと親子の仲も良くなって、試合中にヒナタは指示をよく聞くようにもなりました。そうしたらさらに勝ちにつながって。
ヒナタ 結果が出るようになってからはお父さんが言うことは正しいんだなと思うようになり、今では尊敬の眼差しで見てます(笑)。
――今回ヒナタ選手のことを取材したいと思ったのは、昨年9月のMAキックのリングで男子のジュニアトップ選手を相手にヘッドギアなしのプロルールで激しい試合が印象的だったからでした。ジュニアの女子選手だと各団体のトーナメントに出る選手をよく見るのですが、今は出ていないんですか?
元氣 今までにヒナタはアマチュアでベルトを11本獲ってるんですけど、4年前ぐらいにベルトを獲るのも辞めたんです。本数を増やす機会はあったんですけど、増やしたところでプロになったらゼロからのスタートなので。それなら意味のある試合をしようということで、強い男子選手と素足で試合をやるようになったんです。プロになるまでの今の期間はチャレンジマッチとして階級上の女子の選手に挑んで負けることもたまにありますけど、それでも階級の壁を越えられる選手にはなってほしいですね。今後は大人と戦っていくためにパワーが必要じゃないですか。ヒナタは今も変わらず筋トレでパワー系のトレーニングをすると泣くんです。
ヒナタ 松谷綺選手、小林愛理奈選手とパワーがやばそうですよね。
元氣 将来的にそこらへんを倒さなあかんから。でも一番の目標はそこじゃないもんな。
ヒナタ RIZINスーパーアトム級チャンピオンの伊澤星花選手を倒すことです。私はRIZINに出ることが目標の1つにあり、キックをやりつつ、鈴木千裕選手のような二刀流を目指しています。
元氣 二刀流の女子選手はなかなかいないじゃないですか。実はヒナタは伊澤星花チャレンジに勝手に中3の時にエントリーしてるんです(笑)。

――伊澤選手が女子格闘技界を盛り上げたい、選手層を増やしたいという思いから立ち上げた女子格闘家の発掘・育成プロジェクトですね。
ヒナタ そうです。かなりの長文を考えて「私、頑張ります」みたいな感じでアピールしました(笑)。そうしたら伊澤選手から中学生は無理だよって断られました(笑)。
元氣 昨年11月に僕が出場したRIZINの会場で伊澤選手にヒナタと一緒にごあいさつしたら「またおいでよ」と言われてましたね(笑)。
ヒナタ 今年、高校に進学するのでもう1回エントリーしようかなと思ってます。
――まさかMMAの道も考えていたとは意外でした。
元氣 僕は柔道を小学生の頃から高校卒業まで長年やっていたので、柔道を教えられますし、RIZIN甲子園のベスト4までいったうちのジムの陸刃はレスリングを教えられます。だから楠誠会館でMMAも強くなれると思います。
――同じ立ち技で関西出身のRENA選手も二刀流ですが、憧れはなかったですか?
ヒナタ いいえ、RIZINに出るんやったらRENA選手もぶっ倒します。RENA選手は女子格闘技の一時代を築いた選手じゃないですか。小さい頃から見ていた選手なので、自分がどこまでできるか試してみたいんです。
元氣 将来的にはケイト・ロータス選手ともやりたいみたいで、やることになればバチバチのどつき合いをしそうですよね。
――どちらかというとMMAの女子選手に興味があるんですか?
ヒナタ 今、キックの女子選手で華のある選手が少ないと思うんです。だから今はキックの選手は目標になっていないんです。
――では、キックではなく、MMAの方で先にデビューすることもありそうですか?
元氣 とりあえず一度、誰にも言わずに関西で開催されるMMAのアマチュア大会に出させてみようかなと思ってます。ヒナタがどこまでできるかは未知なんで、教えることを教えた後に夏か秋ぐらいに1回出てもいいかなと。そこからKROSS×OVERさんのMMAに殴り込みしてみようと思います。
――オープンフィンガーグローブで殴ることで相手を壊しちゃうんじゃないかだったり、逆に殴られる怖さはないですか?
ヒナタ 殴るのは問題なく、殴られるのは痛そうですけど楽しみでしかないですね。
――寝技の方も自信はあるんですか?
ヒナタ 全然まだ練習もしてないですけど、ノリで行ったら行けるでしょみたいな。アハハ!
元氣 ヒナタはとにかく首相撲も強く、ボディバランスもめっちゃ強いので、あとは対応能力かなと。頑固な性格なので、これしかできないと思ったらそれしかやらないんですよ。それがダメなところでもあって、長所でもあります。それを上手くやっていったら相当すごい選手にはなると思っています。
――MMAをやるなら苦手な筋トレでさらにフィジカルも鍛えないといけないですよね。
元氣 本当にそうですよね。柔も大事やけど、剛も大事になってきますよね。
――ヒナタ選手は、お父さんがRIZINに出たりと現役選手として頑張っていることをどう感じていますか?
ヒナタ めっちゃ尊敬してます。年齢も行っててこんなに強かったら、どんな選手でもぶっ倒せるかなと思っているんですけど、それでも勝てない世界なんで格闘技って難しいなと思ってます(苦笑)。
――褒めていると思ったら落とすと(笑)。
元氣 アハハ。僕は試合で勝ちに走ればいいのに、楽しさに走っちゃうんです。勝ちに徹した戦いをすれば勝率を稼げるんですけど、勝率を上げたからといって人気が出るわけでもないし、人に注目されるわけでもないじゃないですか。それだけのために格闘技をやっているわけではありませんし。僕の親父は二刃会の会長だったので、生きるか死ぬかを楽しめと言われて育てられてきて、戦いを好きになっていったんです。もともと、僕はアウトボクサースタイルで何年間も負けない時があったのですが、これじゃあ本来の格闘技の楽しさを味わってないと思ってファイター寄りの戦いをするようになったら倒されることが増えて(苦笑)。家族のみんなは心配してるんですけど。そっちの戦いの方が楽しいなと思うようになりましたね。ダウンを奪われてもゾンビみたいに立ち上がるので、まだやるか!? といつも突っ込まれます。
――逆に娘さんの活躍ぶりを見ても刺激になりますか?
元氣 そうですね。これだけ同階級でも小柄でガッツのあるファイトを見せているので、やっぱり刺激になるし、僕も勉強になるところもあります。
この前はKROSS×OVERでスネ当てなしで急遽1週間の間に2回試合に出てるんです。2回とも勝って大したもんやなと思いましたね。僕やったら、多額積まれても絶対にしません(笑)。でもヒナタは一言で出るっていうんです。
――今後がさらに楽しみになってきました。将来的に大きな目標は何かありますか?
ヒナタ MMAを本気でやるならUFCに行きたいです。
元氣 誰でもできるような小さいところで勝ち星を重ねるような中途半端な目標ではなく、とことんやるんやったらやれと言ってます。目標が高いのはいいことだと思うんですよ。
――プロデビューしたら、最初にクリアしたいことはありますか?
ヒナタ キックだと、MA日本キックの女子部門のベルトを作ってもらって、ぜひ獲りたいですね。
元氣 今、女子選手がMA内で増えてきてるんで、ベルトを作ってもらえるようにヒナタはもっと活躍して、連盟の方々を納得させてください(笑)。
――お父さんとしては、娘さんには今後どういったことを期待しますか。
元氣 キックはもうプロでやっていいと思うんです。プロの世界では、勝つことも負けることもあるんですけど、全然そんなことにビビらずにチャレンジしていけばいいなと。強い相手とのオファーがきても、やったらいいと思います。今の選手はみんな負けたくないから、弱い選手や同じ力の選手とやる傾向にあります。それでは意味ないと思いますし、ファイターやったら来た話を全部受けないと。ジャイアントキリングはそれで起こるし、うちの礼司は昨年2月のRISEで寺山遼冴選手に勝って一気に有名になりました。僕はMA日本キック連盟の代表なのでキック界も盛り上げてほしいですが、格闘技全体を盛り上げていってもらえたら。そして、ヒナタには男子選手を焦らす選手になってほしいですね。今、格闘技は男子の世界じゃないですか。年末のRIZINでも女子の試合は1試合組まれればいいところ。そこを女子枠が増やせるような影響力、発言力のある強い選手になってほしいです。
――逆にまだ選手であるお父さんにどういったことを期待しますか。
ヒナタ 親子でRIZINに出たいです。
元氣 今のところRIZINに親子で出た選手を見たことがないので僕もまだまだ頑張らないといけないですね。ヒナタがMMAで、僕がキックに出てもいいよね。僕がオープニングファイトで出て、ヒナタがMMAの本戦に出たらセコンドに入れるし。その時はなるべく無傷で終わらすから(笑)。
――親子でのRIZIN出場も楽しみにしています。こういう機会だからこそ、お父さんに何か言いたいことはありますか?
ヒナタ いつもありがとうございます。
元氣 普段から言ってくれよ……(笑)。
ヒナタ 小さい頃から熱心に指導してくれて感謝しているので、プロになって恩返しをします。
元氣 UFCに出てラスベガスに連れていってよ!
ヒナタ そこは考えときます(笑)。

プロフィール

リングネーム:元氣
生年月日:1986年4月8日
出身地:大阪府
身長:175cm
所属:楠誠会館

リングネーム:北野ヒナタ
生年月日:2010年6月7日
出身地:大阪府
身長:153cm
所属:楠誠会館
アマチュア、セミプロ戦績:135戦105勝(10KO)29敗1分

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