■主催:DEEP☆KICK実行委員会
■名称:DEEP☆KICK 69
■日時:2024年3月31日(日)
■会場:テクスピア大阪
■住所:大阪府泉大津市旭町22-45
写真提供:石本文子、レポート提供:布施鋼治
3月31日、ナンバーシリーズのホーム会場といえる大阪府泉大津市のテクスピア大阪で行なわれた『DEEP☆KICK 69』。メインイベントでKING剛がDEEP☆KICK-53㎏王座を戴冠すれば、セミファイナルではKING龍蔵が大樹との現役DEEP☆KICK王者対決を制した。ふたりはともにROYAL KINGSの所属。この日の関西キック界はこのジム一色で染まった。なお次戦は1週間後の4月7日、豊中市の176BOXで「DEEP☆KICK ZERO 12・13」が行なわれる。
メインイベント DEEP☆KICK-53kg王座決定トーナメント決勝 3分3R 延長1R
〇KING剛(ROYAL KINGS)
×中田史斗(究道会館)
1R TKO(レフェリーストップ)
※KING剛が-53kg第5代王者となる。
三度目の正直を地で行く戴冠劇だった。メインイベントではKING剛(ROYAL KINGS)が中田史斗(究道会館)に1ラウンドTKO勝ち。第5代DEEP☆KICK-53㎏級王者となった。
剛は過去に2度DEEP☆KICKのトーナメントに出場しているが、一度目は長谷川海翔(誠剛館)に、二度目は上村雄音(BKジム)といずれもその後トーナメントを制した選手に敗れている。
これまでの33戦のキャリアの中でキック界の老舗MA日本キックやKOSの王座は奪取しているだけに、DEEP☆KICKのベルトだけには縁がないようにも思われた。しかしながら勝利の女神は日夜努力を続けるベテランを見捨てなかった。
しかも、ラウンド中盤まで試合の流れを握っていたのは中田の方だった。右フック、ワンツー、飛びヒザで攻め込み、いずれものアタックで剛のバランスを崩す。今回の試合が決まるまで中田は剛が所属するROYAL KINGSに何度も出稽古に行っている。お互い手の内は知り尽くしているだけに、中田にとってはそれがプラスに出た格好だ。
そうした中、終盤剛は劣勢の流れを突然断ち切るかのように右フックで先制のダウンを奪う。そして残り時間10秒を切ったところで、明らかにダメージの残る中田に再び右をクリーンヒットさせ究道会館期待のルーキーをキャンバスに這わせた。
この日、セミファイナルでは同門の後輩であるKING龍蔵が大樹との現役王者対決を制しているだけに、メイン、セミともROYAL KINGS勢が勝利を収めたことになる。
試合後、剛は「このベルトが似合うような男になりたい」と謙虚に話し始めた。「僕は-53㎏の選手だったら、デビュー仕立ての選手でもライバルだと思っている。誰とでも組まれたら試合はします」
試合中、何度もグラつかせられたことについて水を向けると、剛は「それがロイキンスタイル」と胸を張った。「何度ダウンを奪われようと、ゴングが鳴るまで試合は終わらないじゃないですか。キックは気持ちで勝てるスポーツなので」
タネ ヨシホ(直心会)、滉大(及川道場)、寺山遼冴(TEPPEN GYM)、長谷川海翔とそうそうたる面々が歴代王者として名を連ねる階級で、ROYAL KINGSが誇る努力の男はどんな歴史を刻むのか。
セミファイナル スペシャルワンマッチ DEEP☆KICK-58kg契約 3分3R
◯KING龍蔵(ROYAL KINGS)
×大樹(HAWK GYM)
判定 3-0(30-29、29-28、30-29)
昨年12月宮崎就斗(TARGET)に2RTKO勝ちし、かつて辛酸を舐めさせられた宿敵にリベンジを果たすとともにDEEP☆KICK-57.5㎏王者となったKING龍蔵(ROYAL KINGS)。挑戦者決定トーナメントで麻太郎(NJKF健心塾)とFUJIMON♡(京都亀岡キックボクシングジム)を撃破した実力はタイトルマッチで結実したといってもいいだろう。
対する大樹(HAWK GYM)は2021年7月にDEEP☆KICK-60kg第8代王者に就くと、大前洸貴(INFINITY KICK BOXING GYM)と上野コウキ(直心会)を挑戦者に2度王座防衛に成功し長期政権を築きつつある石川県の雄。2022年7月には大阪で開催されたCKC2022 -57.5kgトーナメントでも優勝を飾るなど、その実力は関西のキックファンにも浸透している。
そんなDEEP☆KICKが誇る現役二大王者が契約体重で激突した。勝負が動いたのは1R終盤だった。龍蔵は右ミドルキックで大樹をロープまで大きく吹っ飛ばす。2Rになると、大樹のミドルに合わせてワンツーを打ったりするなどのカウンター殺法に活路を見出す。蹴り足を払ってスリップダウンを奪う場面もあった。
3Rになっても、龍蔵のカウンターは冴え渡るばかり。相手の前進に合わせ左ミドルを合わせたかと思えば、右ローをヒットさせ相手のスタミナを削りにかかる。大樹の懐に入ってのテンカオ(カウンターのヒザ蹴り)も効果的だった。大樹は左ストレートに活路を見出そうとするが、手数が少なかったせいだろうか、ポイントとして認められることはなかった。29-28、30-29(×2)のユナニマス・デシジョンで龍蔵の判定勝ちだ。
19歳とは思えぬ龍蔵のクレーバーな戦術にハメられた大輝はDEEP☆KICK5戦目にして初黒星となった。試合後、マイクを握った龍蔵は「いや、しんどっ」と本音を吐露する一方で、「結構前評判では俺の不利だったけど、いけるにきまってるじゃないか、このボケ」とシャウトした。続けて「次、6月のRISE大阪で梅井とやってもいいんで。以上」と京都出身で元RISEフェザー級王者・梅井泰成(Mouton)との対戦をアピールした。RISEとDEEP☆KICKの新旧王者対決はエディオンアリーナで実現するのか。
第8試合 DEEP☆KICK-60kg挑戦者決定トーナメント準決勝 3分3R 延長1R
◯上野コウキ(直心会)
×健真(BLACK☆Jr)
判定 2-1(29-28、29-30、29-28)
※上野コウキがトーナメント決勝に進出する。
周囲の期待を裏切ることなく、所属するBLACK☆Jrのキッズたちを従え、[元祖]たこ焼きのうたで入場してきた健真(BLACK☆Jr)。対する上野コウキ(直心会)は今年1月に宮城武蔵(名護ムエタイスクール)を三日月蹴りで2RTKOで下して西日本統一ライト級王者となったばかり。試合は-60㎏挑戦者決定トーナメント準決勝がかかる一戦らしく、シーソーゲームになった。
上野が左ミドルで攻め込めば、健真はワンツーからのカウンターのヒザ蹴りでやり返す。2Rになっても、健真のバッティングで試合が一時中断した以外、試合の流れはさほど変わらない。2Rまでのオープンスコアは三者ともイーブン。3R、勝負をかけた上野は前に出てパンチを強振すれば、健真も打ち合いに応じる。そうした中、健真の蹴りがローブローになってしまい、イエローカードを提示されてしまう。しかし1分30分過ぎになると、健真も積極的に自分から前に出た。
スコアは2-1で上野。3Rの試合内容が命運を分けた一戦だったか。試合後、上野は「ぶっちゃけ、自分が負けたと思っていた。でも勝ったからにはもっと強くなって、6月のトーナメント決勝では絶対に勝つ」と必勝をアピールしていた。
第7試合 DEEP☆KICK-52kg契約 3分3R
◯溜田蒼馬(FUTAMI FIGHTCLUB)
×セネガル駿一(NJKF心将塾)
判定 2-0(28-27、27-27、28-27)
いったい誰がこれほどの激闘になると予想していたであろうか。溜田蒼馬(FUTAMI FIGHTCLUB)とセネガル駿一(NJKF心将塾)の一戦は今大会のベストバウトをメインのKING剛vs中田史斗と争うほどの一戦となった。実をいうと、ふたりは以前ともに所属していたジムのジムメイト。もっといえば、小学生の頃からの親友だ。しかしお互い別々のジムに移籍し、今回セネガルが引退マッチとしてリングに上がることを決意したことで親友同士の一騎討ちが実現した。
当然お互い相手の手の内やクセはわかりすぎるほどわかっている。とはいえふたりの間に遠慮など一切なかった。スリップダウンしたセネガルの頭部を溜田は何度サッカーボールキックを狙ったことか。最後の介錯まできちんとやることが親友に対しての礼儀だと思ったのかもしれない。
戦前の予想ではかつて当時RISE王者だった鈴木真彦(フリー)からダウンを奪ったこともある溜田が有利といわれていた。果たして溜田は1Rに痛烈な左で先制のダウンを奪う。ラウンド終盤には左の追撃で二度目のダウンをとり、KO勝ちは時間の問題かと思われた。
しかし、第2R、レフェリーのストップ後に放ったヒザ蹴りで溜田は痛恨のレッドカードをもらってしまう。その後左の三日月蹴りで相手の足を止める場面もあったが、それからのセネガルの粘りは驚異的だった。左フックで溜田をグラつかせる場面もあった。
2Rまでのオープンスコアは二名が18-17、一名が19-17とともに溜田。3R、溜田がテンカオで攻め込むと、セネガルが明らかに嫌がる素振りを見せる。しかし、この日のセネガルはまるでゾンビだった。その後、左ストレートで逆に溜田に効かせるなど相手の追撃を許さない。最後はともに死力を尽くしての打ち合いになった。気力と気力の勝負。まるで宇宙遊泳の中での打ち合いのようにも見えたが、その凄味は観客席まで十分すぎるほど伝わっていた。判定は2-0で溜田。試合後、溜田は親友との一騎討ちを実現させるため、今回10㎏の減量で試合に臨んだことを明かした。一方、セネガルは引退後、アフリカのセネガルから故郷の兵庫県明石市にUターン。結婚して大工として身を立てることを誓っていた。
第6試合 DEEP☆KICK-57.5kg契約 3分3R
×都筑海杜(TEAM3K)
〇嘉武士(NJKF健心塾)
2R TKO(セコンドタオル投入)
RISEでは現役ランカーとして活動する都筑海杜(TEAM3K)がDEEP☆KICK本選に初登場。嘉武士(NJKF健心塾)と拳を交わした。1R、都筑は見るからに重厚な右ローを武器に前に出る。嘉武士も右ミドルで反撃するが、都筑のペースだ。
勝負の幕切れは呆気なかった。続く2R、嘉武士との激しいやりとりの中での蹴りが嘉武士にカットされたことが原因か、都筑は急に足に力が入らなくなったように倒れ込んだ。ドクターが駆け寄ると、すぐ左足の親指の異常を訴え、セコンドの肩に担がれて退場した。
第5試合 DEEP☆KICK-53kg契約 3分3R
×吉田亮汰朗(BKジム)
〇山田貴紀(山口道場)
2R TKO(レフェリーストップ)
DEEP☆KICKだけでプロのレコードを重ね、現在3勝1敗3KOと波に乗る山田貴紀(山口道場)が第5試合に登場し、BKジムの吉田亮汰朗(BKジム)と激突した。
1R終盤、山田は右フックで先制のダウンを奪う。続く2Rにはヒザ蹴りで相手を削りながら、右ストレートで早くも2度目のダウンをとり、最後は右のダブルで粘る吉田に引導を渡した。試合前、山田は-53㎏のランキングで第6位に入っていた。この勝利でランクアップは確実。この日王者になったばかりのKING剛(ROYAL KINGS)への挑戦も夢ではない。
第4試合 DEEP☆KICK-53kg契約 3分3R
×荒川ルシファー大夢(NJKF心将塾)
〇松本愛斗(月心会チーム侍)
2R TKO(セコンドタオル投入)
※荒川が計量オーバーにより減点2及びグローブハンデ。
木村ケルベロス颯太(NJKF心将塾)に続いての地獄からの使者として注目された荒川ルシファー大夢(NJKF心将塾)だったが、前日計量で1.95㎏オーバー。それでもアマチュアで数々の実績を引っ提げ今回プロデビューの松本愛斗(月心会チーム侍)は試合成立を臨んだため、減点2+グローブハンディをつけての試合開始となった。試合は松本が勝ったときのみ成立し、荒川が勝ってもノーコンテストとなる。
1R、松本は荒川の前進を待ってワンツー。さらに右ボディアッパーで攻め込む。続く2Rになると、右のストレートやボディアッパーで完全に荒川を攻略。思い切り右ストレートでアゴを打ち抜き、荒川が前のめりに倒れると、荒川のセコンドからタオルが投げ込まれた。今後、松本は-53㎏級のランキングを脅かす存在になるか。
第3試合 DEEP☆KICK-55kg契約 3分3R
〇虎太朗(TEAM3K)
×香川刻(Blaze)
1R TKO(レフェリーストップ)
今大会がプロデビューとなる香川刻(Blaze)が第3試合に登場し、TEAM3Kの虎太朗(TEAM3K)と激突した。先手を取ったのは虎太朗の方だった。1R開始早々、ローを内と外から打ち分け、削りにかかる。その勢いでテンカオを炸裂させると、香川はローブロー訴えるが、虎太朗サイドは「当たってないだろ!」とアピールする。いまがチャンスと判断した虎太朗はボディに攻撃を集中砲火すると、香川は苦しそうに四つん這いの体勢でダウン。すぐにレフェリーは試合を止めた。
第2試合 DEEP☆KICK-66kg契約 3分3R
×財津大樹(TEAM BEYOND)
◯怜(WIZARD)
判定 0-3(28-30、27-30、28-30)
福岡県小倉にあるTEAM BEYONDの財津大樹(TEAM BEYOND)がDEEP☆KICKに2度目の参戦。WIZARDの怜(WIZARD)と対戦した。1R開始早々、怜は右のミドルやロー、さらにワンツーと立て続けに攻撃を繰り出す。中盤以降になると、右ストレートや、右ボディストレートと左ストレートの連打がクリーンヒット。試合の主導権を握る。続く第2R、あとがない財津は長身を活かしたテンカオに活路を見出し、試合の流れをたぐり寄せる。2Rまでのオープンスコアは3-0で怜。有利なスコアに気をよくした怜は3Rもパンチを積極的に繰り出し、3-0の判定で勝利を収めた。
第1試合 DEEP☆KICK-53kg契約 3分3R
×ゆいら(NJKF健心塾)
◯山﨑天輔(VALIENTE)
判定 0-3(28-30、28-29、28-30)
この日は第1試合が熱かった。NJKF健心塾のゆいら(NJKF健心塾)が身長162㎝ならば、VALIENTEの山﨑天輔(VALIENTE)の身長は176㎝。両者の身長差は実に14㎝もあった。その差をゆいらがいかに切り崩すかが勝負のキーポイントだった。
1R、山﨑は身長差を活かしたテンカオを軸にワンツー、前蹴りを矢継ぎ早に繰り出し、ゆいらを懐に入れさせない。
終盤になると、距離感を掴んできたゆいらはようやく反撃を開始。右ストレートや右ローで切り崩しにかかる。続く2R、山崎が2階から打ち下ろすようなワンツーを繰り出すと、ゆいらは「そんな攻撃は効かない」とばかりに微笑を浮かべる。その後、ゆいらは強引に相手の懐に入ると、試合は俄然ヒートアップ。このラウンドはゆいらが優勢だった。
ただ、この時点でのオープンスコアは1-0で山﨑。あとがないゆいらはガードを固めて中に入ろうとするが、山﨑はテンカオで鉄壁のガード。結局、このラウンドはほぼ互角の展開のまま終わった。気になるスコアは3-0で山﨑。最後まで予断を許さない展開だったという意味で、場内の熱は一気に高まった。
NEXT☆LEVEL提供試合
オープニングファイトのNEXT☆LEVEL提供試合も好勝負の連続だった。第5試合で杉生虎雅(NJKF心将塾)を判定で下した斉藤大地(パラエストラ東大阪)はアマチュアとはいえ、マッチョ系のボディから繰り出す攻撃は魅力十分だった。来年プロデビューを目指す大崎寛太(TEPPEN GYM)を判定で下した杉本健(龍生塾ファントム道場)はストレートやテンカオなど右の多彩な攻撃を武器に大﨑を攻略していた。MVPは左のテンカオを武器に木原彩人(02GYM)から2度もダウンを奪って快勝した阪本皇生(Menace Fight Club)。遠い距離からも相手を倒せる攻撃はもうすぐ13歳とは思えぬほどの破壊力を秘めていた。
オープニングファイト第5試合 -50kg契約 1分30秒2R
×杉生虎雅(NJKF心将塾)
◯斉藤大地(パラエストラ東大阪)
判定 0-3(19-20、18-20、19-20)
オープニングファイト第4試合 -55kg契約 1分30秒2R
◯杉本健(龍生塾ファントム道場)
×大崎寛太(TEPPEN GYM)
判定 3-0(20-19、20-19、20-19)
オープニングファイト第3試合 -40kg契約 1分30秒2R
×木原彩人(02GYM)
◯阪本皇生(Menace Fight Club)
判定 0-3(16-20、16-20、16-20)
オープニングファイト第1試合 -60kg契約 1分30秒2R
◯久保量資(レッドタイガージム)
×矢倉琉寵那(Determination)
判定 3-0(20-19、20-19、20-19)