「もっと西日本在住の格闘家に光を!」
そんなリクエストに応えるかのように西日本格闘漫遊記がスタート。
記念すべき第1回は噂の桃花シンデレラ(山口道場)にご登場願おう。
記事・写真:布施鋼治、試合写真:池田博紀
「わたしは小学生の頃からキックボクシングのプロになりたいと思っていたんですよ」
幼少期の女の子といえば、ケーキ屋、パン屋、花屋になりたいという子が多い。そうした中、なぜキックボクシングを?
「生まれたときくらいからお父さんがわたしにグローブを付けボクシングを教えてくれたんですよ。小3からジムにも通うようになりました。それで試合に出たら、勝つ喜びを忘れられなくなってしまったんですよ」
リングネームである″シンデレラ″は子供の頃シンデレラが大好きだったことに由来するという。
「七五三の時とかもシンデレラのドレスを着るような子だったんですよ。石川県に住んでいる(母方の)おじいちゃん・おばあちゃんからすれば、わたしのイメージはずっとシンデレラ。昨年震災があったとき、おじいちゃんとおばあちゃんの家は被災してしまった。お父さんと話し合って、(祖父母を元気づけるためにも)″本名よりシンデレラにした方がいいんじゃないか″という話になったんですよ」
桃花の父・祐太さんはアマチュアボクシング出身。娘が生まれても格闘技に対する情熱が覚めることはなく、家では格闘技について熱心に話しかけてくるという。
「わたしは5人兄弟の長女。上の4人はやっていたけど、いまは私以外だとやっているのは長男だけ。まだ小2ですけど(笑)」
桃花の最大の魅力を挙げるとするならば、倒せるパンチを持っていることに尽きる。
「いつも自宅でお父さんが厳しく指導してくれることがそう思ってもらえる要因のひとつなんじゃないかと思います」
小3から小6にかけ、キックのジムと平行して、ボクシングジムにも足繁く通い、子供ながらボクシングのイロハを叩き込まれたことも大きい。その舞台は大阪天神ボクシングジム。元WBOアジア太平洋スーパーバンタム級暫定王者だった山口賢一氏が代表を務め、最近までは5団体で世界ミニマム級王者になった高山勝成が練習の拠点としていた場所としても有名だ。
「小学生のとき、天神ジムの山口会長からは″オリンピックを目指せ″とずっと言われていました。でも、やっぱりキックの方が好きでしたね」
昨年12月8日、DEEP☆KICK ZEROで山口道場所属でプロデビューを果たしたが、その試合内容は衝撃的だった。女子といえばどんな選手でも初戦は判定決着がノーマルながら、桃花は自分よりキャリアのあるseroを相手に1ラウンドからパンチの連打を畳みかけ、とどめは左ストレートで1RTKO勝ちを収めたのだ。その強打を買われ、2戦目からはDEEP☆KICK初代-46㎏王座決定トーナメントにエントリー。周囲の期待に応えるかのように勝ち上がり、6月22日のDEEP☆KICK74では百花との決勝を迎えた。
知っての通り、百花は魁塾の女子部を牽引する関西の女子キック界きっての実力者として知られ、RISEのタイトル戦線に絡んだこともあるキックボクサーだ。
この決勝を迎えるまでの戦績は実に51戦。対照的に桃花の方は3戦しかしていなかったので、実に17倍ものキャリアの差があった。奇しくもふたりとも名前の読み方は同じなので巷では″MOMOKA対決″として話題を呼んだが、時として勢いと自信はキャリアを陵駕する。このときの桃花はまさにそうで、1Rから前蹴りやミドルキックからのワンツーや右ボディフックで前に出て試合を優勢に進めたのだ。
続く2Rになっても、試合の流れは変わらない。3R、もうあとがない百花は果敢に打ち合いに持ち込むも、桃花を攻略するまでには至らなかった。判定は3-0で桃花。山口道場所属の女子としては記念すべき初の戴冠劇となった。その後試合のオファーを受けることもあったが、以前から痛めていたケガを治すために桃花はあえて6カ月に及ぶ充電期間をとった。











































