記事・写真:布施鋼治、試合写真:池田博紀
大好きなパチンコはしばらくやっていない。「練習が忙しすぎて、行く時間がなくなってしまったんですよ」
『RISE ELDORADO 2026』(3月28日・東京両国国技館)で那須川龍心との間で空位のRISEスーパーフライ級王座を争う長谷川海翔は必死だ。「今まで週3くらいだった走りも今は週5はやっていますね。練習も2部練は週2回くらいだったけど、今は週5回は2部練か3部練をやっています」
DEEP☆KICKで長谷川を初めて見たとき、バケモノが出てきたと思った。それはそうだろう。3試合連続1ラウンドKOという離れ業をやってのけたのだから。スピード、切れ味、テクニック。何から何まで対戦相手と比べると、段違いだった。
しかしRISEに参戦以降、姫路の神童は次第に普通の選手になっていく。例えるなら、地元では神童扱いされていた少年柔道家が関東の強豪校にスカウトされ胸を高鳴らせながら上京したまでは良かったものの、次第に埋没していくシチュエーションに似ているように思えた。
自分だけが神童ではなく、まわりはみな神童という環境になったら、おのずと優劣がつく。ブラッシュアップされ神童のままの者もいれば、神童の中で落第生になる者もいるということだ。とりわけ昔も今もRISEの軽量級戦線は強豪揃いで、少しでも油断したらすぐ食われてしまう。
若さゆえの油断や甘さもあった。2023年11月18日のRISE173で行われたRISE NEW WARRIORS スーパーフライ級トーナメントエントリーしたときには初戦となるHIROYUKIとの準決勝は勝利を収めたが、政所仁との決勝ではハイキックでダウンを奪われた挙げ句判定負けを喫してしまった。
前日計量をクリアした直後、長谷川は会場近くのパチンコ屋に出かけている。マイペースといってしまえば、そこで勝負運は尽きてしまったのだろうか。
政所戦後、長谷川は頭をかきながら約束した。「もう試合前には行きません」。
高校時代は寝坊癖が治らず、盟友・塚本望夢からの「起きとんのか」というモーニングコールで目覚めることも日常茶飯事だった。「いまでも起こしてもらうことはちょこっとあります(照れ笑い)。朝から一緒に練習することも多いので」
誰もが認める才能とセンスを持ち合わせながら、不摂生な日常生活を送っていれば宝の持ち腐れになっても不思議ではない。
今回のタイトル挑戦をきっかけに、長谷川の中で何かが大きく変わろうとしている。
「やってやるという気持ちが全身にみなぎっています」
もしかしたら長谷川は大物かもしれないエピソードがふたつある。ひとつは睡眠時間で、とにかく眠る。「最近だったら、16時間くらい寝ちゃったときがありましたね。目覚めたはときはヤバいと思ってビックリしました。さすがに寝すぎたせいで体は逆にしんどかったですね」
もうひとつはよくサイフを落とすなど、そそっかしい面があるところだ。
「去年だけで5回くらい落としています。落としたサイフは戻ってきたり戻ってこなかったり。電車の中で落としたら、帰ってくる可能性が高い。パチンコ屋さんの中で落としたときも割と帰ってきました。カウンターから『長谷川さま、お伝えしたいことがあります」と呼び出しを受けるのは恥ずかしいですけど(照れ笑い)」
まだ39~40歳という母親が心配になってしょっちゅう連絡してくるという話も頷ける。「お母さんはめっちゃ過保護で、めっちゃ心配性です」
もちろん長谷川は巷の勝敗予想は龍心の方に大きく傾いていることは承知している。
確かに現在の龍心選手はホンマに成長しまくっている。だいぶ強くなったという印象ですね」
でも、と長谷川は力強く言葉を続けた。
「いろいろなトレーナーからアドバイスをもらったりしているので、自分が龍心選手に負けるところは想像つかない」
最も心強いのは、日頃一緒に練習する機会が多い塚本の存在だ。龍心との王座決定戦が決まると、塚本は仮想・龍心となって練習パートナーを務めてくれているというのだ。
「望夢は龍心選手と(アマチュア時代も含めると3度も)対戦経験があるので、成りきっていますね。もう笑うくらい似ています。最近は表情まで似てきたりしている」
もっとも、龍心は今回の王座決定戦を「あくまで通過点」と位置づけている。以前から前RISEスーパーフライ級王者(返上)の花岡竜との対戦を周囲は熱望していたが、なかなか対戦が決まらず、結局花岡は王座を返上し階級アップを宣言してしまった。
そこで龍心はスーパーフライ級王座を獲得後花岡との一戦を目論むが、長谷川は待ったをかける。「そんなことを言っていると足元をすくわれるぞ、と言いたい。最後は僕が笑っていますよ」
花岡との一戦を熱望しているのは龍心だけではない。長谷川も一昨年6月19日のRISE179で花岡に辛酸を舐めさせられているだけに再戦の機会を伺う。
「僕の場合、花岡選手とともにリベンジしたい相手がもうひとりいる。政所選手です。理想をいえば、政所選手を挑戦者に防衛戦をしてから55㎏級に上げ、大﨑孔稀選手にも勝ってから花岡選手にリベンジマッチを挑みたい」
長谷川は修羅の道に踏み込もうとしている。もう運も財布も落とさない。






















































